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平成23年の税制改革の議論の中で、現行1年しか認められていなかった「更正の請求」制度が5年間に延長され、課税庁による税額の増額・減額の期間も5年に統一されました。法律は1年しか認められていなかった還付請求の期間が5年に延長されるわけですから、国民の中に租税意識、ひいては還付意識もより高まってくると考えられます。
支払った税金を取り戻すというのは節税するより大変です。しっかりした理論武装とともにお上に主張するという行為を組み合さなければならないからです。まさに日本人の苦手だった民主主義の世界といえるでしょう。
ここでは、資産税を中心とした還付が生じる可能性の高いケーススタディを、Q&A形式で取り上げます。
払い過ぎた税金を返してもらう場合の基本手続とはどのようなものでしょうか。
払い過ぎた税金を還付してもらうには、納税者側から「更正の請求」という手続を行う必要があります。国税のほとんどが申告納税方式であることから、納税者は自らの申告により税額を確定させています。その税額が過大であることなどを法定申告期限後に気が付いた場合には、納税者自らが「更正の請求」を行って権利救済しなければなりません。
ただ、「更正の請求」によって税金が戻ってくるわけではなく、税務官庁が請求の理由がないとして却下すると、その後は、異議申し立て、審査請求又は訴訟によって争うことになります。ちなみに、「更正の請求」ができる期限は、平成23年12月2日以後に法定申告期限が到来する国税については法定申告期限から原則として5年以内となります。なお、平成23年12月2日より前に法定申告期限が到来する国税については、更正の請求の請求期限は従来どおり法定申告期限から1年となりますのでご注意願います。
「更正の請求」をした後の審査請求までの一連の流れについて教えてください。
納税者から「更正の請求」があると、税務署長は速やかに調査を行い、減額更正をするか、もしくは構成をすべき理由がないかを判断して請求人(納税者)に通知します。更正すべき理由がないという場合には、青色申告者については、①税務署長に対する異議申立てと②国税不服審判所長に対する審査請求とのいずれかを選択することができます。
給与所得者などのような青色申告者以外については、税務署長に対してのみ異議申立てができ、その異議申立て決定後の原処分になお不服がある場合に限って国税不服審判所長に対して審査請求をすることができます。ただ、異議申立てをして3ヶ月を経過しても異議決定がされない場合には、審査請求をすることができます。
もし請求期限内に「更正の請求」の手続などができなかった場合にはあきらめるしかないのでしょうか。
計算上のミスなどによって多く払い過ぎているという事実が明確になったが、更正の請求の権利を主張できる期限を過ぎていた場合には、速やかに税務署長に対して嘆願書(もしくは請願書でもいいが、効力的にはいずれも同じです。)を提出することが考えられます。
「嘆願書」に関する法律的な効果は基本的にありません。税務署長の「裁量」の範囲であり、義務とはいえないからです。しかし、何もしないよりは嘆願書を提出することで、税務署長が決定する「減額更正」を促すきっかけを作り出すことで、還付を受けられる可能性も生じてきます。
ただ、税務署長の行う減額更正にも期限があり、法定申告期限の日から5年とされています。
相続税法による更正の請求の特則について教えてください。
相続税や贈与税は、財産に対する課税です。したがって、その財産に関して裁判となることもあり得ます。そこで、国税通則法23条2項では、後発的理由などにより更正の請求を行う場合には、それらの事実が生じた日の翌日から2ヶ月以内に更正の請求をすることができると定められています。
また、相続税では、税額を計算する際に、分割された財産や相続人などについても考慮しなくてはなりません。相続の期限内に相続人間における財産の分割協議がすぐにまとまるとも限りません。また相続人に関しては胎児の出生や死後認知などにより異動することもありますので、相続税額が過大となるケースが出てきます。こうしたケースでは2ヶ月では短いため、相続税法32条では、下記の事由が生じた日の翌日から4ヶ月以内に更正の請求ができると定められています。
① 未分割による申告後、分割が行われ、課税価格が異なったこと
② 認知や相続人の排除などにより相続人に異動を生じたこと
③ 遺留分の減殺請求により返還額などが確定したこと
④ 遺贈による遺言書が発見された又は遺贈の放棄があったこと
⑤ 条件付物納の許可が取り消されたこと
⑥ 相続などにより取得した財産についての権利の帰属に関する訴えについての判決があったこと
⑦ 停止条件付遺贈の条件が成就したこと
⑧ 死後認知による分割後の被認知者の請求があったこと
⑨ 特別縁故者に対する財産分与があったこと
⑩ 未分割による申告後、分割が行われ、課税価格は変わらないが、配偶者の税額軽減の規定や小規模宅地等の特例の適用後、すでに申告した相続税額と異なることになったこと
⑪ 相続開始の年に被相続人から贈与により取得した財産を贈与税の課税価格に算入したこと
現在保有している株式は、①売却予定だが値下がりして塩漬けとなっている株式と、②配当金の受取を目的として長期的に保有している株式の2種類があります。このたび、一定のお金が必要となり塩漬けとなっている①の株式を売却しました。そのため、株式の売却損が発生していますが、②の株式の配当所得から差し引かれている所得税は還付してもらうことは可能でしょうか。
上場株式等を証券会社などの金融商品取引業者等を通じて売却したことにより生じた損失の金額がある場合は、確定申告をすることでその年分の上場株式等に係る配当所得の金額と損益通算することができます。したがって、配当所得から控除されている所得税を還付することができます。
現在、都心で出版社に勤務していますが、両親とも高齢ですので、転職して家族で実家に戻り両親と暮らそうと思っています。不動産会社に自宅売却の仲介をお願いしていますが、ちょうど2,000万円で購入したいという方が現れましたので、売却しようと思っています。購入価額は4,000万円であったため、売却すると損失となり、住宅ローンも一部残りますが、申告したほうがよいのでしょうか。
住宅ローンが残っているマイホームを、ローン残高を下回る金額で売却した場合には、一定の要件を満たせば、他の所得と損益通算ができます。また、その年分の他の所得から差し引いても損失が残るときには、その譲渡の年の翌年以降3年内に繰り越して控除できる特例もあります。この特例は、新しいマイホームを購入しなくても適用が受けられます。したがって、給与所得として源泉徴収された所得税が還付されることになります。
2人の子どもが中学生と小学生になりましたので、広いマイホームへ住替えをすることにしました。今のマイホームは15年前に5,000万円で購入したものですが、2,000万円で売却できそうです。売却額の一部を頭金にして、残りはローンを組んで新しいマイホームを購入しようと思います。税務上ではどのような制度があるでしょうか。
マイホームを買い換えた場合で、旧マイホームの売却により売却損が生じているときは、一定の要件を満たしていれば、その譲渡損失を給与所得などの他の所得と損益通算したり、翌年以降の繰越控除を受けることができます。また、この特例と新マイホームにかかるローン控除との併用適用も可能です。
現在、2頭の馬を保有していますが、今回そのうちの1頭を売却することにしました。この馬の賞金については、毎年雑所得として確定申告をしていますが、売却額は購入時の価額よりは安いので、損失が生じます。今年は、同じ馬からの賞金と売却による損失の両方が生じますが、この賞金の所得と売却損失の損益を通算するとはできるのでしょうか。
事業的規模でない競走馬は、生活に通常必要でない資産とされており、そのような資産の売却による損失は、譲渡所得内では合算できますが、他の所得との損益通算はできません。しかし、同じ競走馬の収入(賞金)と売却損については、損益通算をすることは可能です。したがって、確定申告をすれば、賞金から差し引かれている源泉所得税の還付を受けられるケースがあります。
10年前にゴルフ会員権を購入しましたが、仕事も忙しくあまり利用できなくなってきました。今、売却すると売却損が生じますが、何か税務上のメリットはるのでしょうか。
ゴルフ会員権には、預託金式のものと株式方式の2種類がありますが、いずれのケースも、売却すると譲渡所得として課税されます。しかし、土地や建物を売却したときの分離課税される譲渡所得とは異なり、給与所得などの他の所得と総合課税されることになります。したがって損失が生じた場合には、他の所得と損益通算をすることができますので、所得税が還付されることがあります。
年間に数回程度の株式売買を行っています。できるだけ長期間所有していくスタイルをとっていますが、その中の1社が今回上場廃止となりました。再建していくとの新聞報道がありましたが、株主責任として100%減資という方向性を打ち出しています。この場合、株式価値は0となりますが、他の所得や他の株式の売却益との損益通算は可能でしょうか。
所有されている株式が証券会社の「特定管理口座」に入っている場合には、証券会社から「価値喪失株式に係る証明書」が郵送されてきます。価値喪失株式に係る証明書には、上場廃止した株式の取得価額が記載されています。したがって、翌年の確定申告書に上場廃止した会社株式の取得価額を移記してこの証明書を添付すれば取得価額が株式の譲渡損失となり、同年度で発生した他の株式の譲渡益と損益通算することができます。また、この譲渡損失は100%減資の翌年、翌々年の株式の売却益との通算もできることとなっています。ただ、特定管理口座に入っていない株式が上場廃止後に100%減資となった場合には、他の株式の配当所得とは損益通算はできません。非上場株式としての取扱いになるからです。
勤務時代の貯蓄で25年前に加入していた1,000万円の一時払養老保険が満期になり、1,095万円が振り込まれました。保険会社から支払調書をもらいましたが、1,100万円で税金が5万円差し引かれているようです。確定申告をしたほうがよいのでしょうか。
一時払養老保険において、保険期間が5年超の場合の満期保険金取得時の差益については、一時所得として所得税が課税されます。保険会社から差し引かれている額は源泉所得税ですが、他に所得がない場合には、確定申告をすれば全額が還付されることになります。また、当質問者が夫等による控除対象配偶者になっている場合は、満期保険金の差益による所得は38万円以下ですので、税務上は、配偶者控除の適用を受けることができます。
私は現在、年間1,000万円の総所得金額があります。
友人が2年前にベンチャービジネスを設立しました。しっかりした事業計画と成長性も高いと思われるため、増資引き受けの要請を受けて100万円を出資しました。友人からは、エンジェル税制の対象となっている会社なので、出資金が寄附金になって税金が戻ると聞きました。どうすればよいのでしょうか。
特定新規中小企業者に該当する一定の株式会社によって発行された株式を、平成20年4月1日以降発行時に、払込により取得した場合には、株式の取得に要した金額が特定寄附金として取り扱われることになっています。これを通称エンジェル税制といい、ご質問の場合、出資した企業がこのエンジェル税制の対象になっている場合には1,000万円を限度として特定寄附金控除の対象となり、所得税が還付されます。
6,000万円でマイホームを購入しました。5,000万円は住宅ローンです。住宅を買ったときは、確定申告をすれば税金が還付されるという説明を受けたのですが、私は、給与収入のみで毎年の年末調整は会社に任せきりです。どうすれば税金が戻ってくるのでしょうか。
住宅ローン等を利用してマイホームを新築、中古などで購入したとき又は増改築等をしたときは、一定の要件を満たしていれば、「住宅借入金等特別控除」として所得税から税額控除することができます。ただ、初年度だけは確定申告が必要で、2年目以降については年末調整で精算できます。
商社勤務で、2年前よりソウル支店に配置されています。今年、日本にいる父が亡くなり、土地を相続することになりました。土地は企業に賃貸しており、地代については源泉徴収されています。私は非居住者ですが、日本国内からの収入については税務上、どのように取り扱えばよいのでしょうか。
非居住者が、日本国内にある不動産を賃貸して得られる所得は、国内源泉所得となります。この場合には、日本での確定申告が必要ですので、納税管理人を定め、その納税管理人を通じ、確定申告をしなければなりません。また借り手の法人が非居住者に支払う賃借料については所得税を源泉徴収する義務があります。したがって、確定申告をすれば税金が還付されるケースがあります。
最後の給料が未払いとなったまま、勤務先のA社が営業停止となり、従業員は解雇となりました。A社は、従業員から徴収した所得税について国に未納付のようです。そのうえ、未払給料は、源泉徴収票に含まれています。源泉所得税が未納付の場合と給与が未払いで源泉所得税が未納付の場合のいずれのケースでも確定申告をすれば税金は還付できますか。
源泉徴収義務者であるA社は、給与等を支払う際に、所得税を徴収し、原則、翌月10日までに国に納付しなければなりません。ただ、A社が支払うべき源泉所得税を納付していなかったとしても、その源泉徴収義務者が納付すべき日に納付したものとみなされます。しかし、未払給与に対する源泉所得税は、実際に給与を支払ったときに徴収されるまでは、確定申告をしてもその所得税は還付されません。
昨年、上場会社を早期退職し、今年、その退職金で投資用ワンルームマンション5戸を購入しました。購入当初は賃料収入もなく、また手数料などの費用もかかってしまうので、利益(所得)はマイナスとなりそうです。不動産会社によると青色申告を申請したほうがよいとのことで、提出は終わっていますが、今年の不動産所得の赤字はどのような取扱いになるのでしょうか。
青色申告者である事業所得者や不動産所得者に損失がある場合で、その損失をその年において生じた他の所得と損益通算しても、なお控除しきれない金額があるときには、その損失額を翌年以降3年間にわたって繰り越すことができる制度があります。これを、純損失の繰越控除と呼びます。したがって、来年以降3年以内に所得が生じた場合には、その所得から繰り越した損失分を控除することができます。
平成22年12月に賃貸用マンションが完成し、平成23年1月から入居が始まっています。建設中に自動販売機を設置し、消費税の課税売上高が発生しました。そのため22年分は7月1日より課税事業者の選択をし、課税売上割合が95%以上となるため賃貸用マンションの取得に要する費用に係る消費税額について還付を受けました。
平成23年分からは賃貸用マンションに係る家賃収入が大半を占めますが、課税事業者の選択を2年間適用した後に、消費税課税事業者選択不適用届出書を提出したいと考えています。賃貸用マンションに係る消費税の還付を受けたままにすることはできるのでしょうか。
課税事業者を選択した事業者が、課税事業者になってから2年を経過するまでの間に調整対象固定資産の課税仕入れ等を行った場合には、その課税仕入れ等を含む3年間は免税事業者に戻れず、また、簡易課税制度の適用も受けられません。また、賃貸用マンションを取得した課税期間の課税売上割合と第三年度までの通算課税売上割合を比較して著しく減少している場合には、課税仕入れ等に係る消費税額の調整が必要となります。
当社は消費税の免税事業者です。当期の事業年度開始の時点では設備投資の予定は無かったのですが、事業展開の都合上、急遽、設備投資をすることになりました。この設備投資により消費税が還付になる予定ですが、免税事業者が事業年度の途中で行った設備投資について消費税の還付を受ける方法は何かるのでしょうか。
設備投資をする前に、「消費税課税期間特例選択届出書」を提出して消費税の課税期間を短縮するとともに、その短縮した課税期間の開始の日前に「消費税会税事業者選択届出書」を提出することで、以後の課税期間については課税事業者となります。したがって、設備投資による課題消費税の還付申告をして消費税の還付を受けることができます。
私は部屋数10室の集合住宅と隣接する駐車場15台(うち10台が部屋の賃借人)を賃貸しています。住宅用地については固定資産税の軽減措置が適用されていますが、駐車場部分には適用されていません。駐車場の賃貸人は集合住宅の賃貸人なので、駐車場部分にも軽減措置の適用は受けられないでしょうか。また、受ける場合はどのような手続が必要でしょうか。
集合住宅の居住者専用の駐車場は住宅用地と考えられるため、軽減措置の適用を受けることができます。ご質問のケースは「固定資産税の住宅用地等申告書」を市区町村に提出することにより住宅用地に係る固定資産税の特例が適用されます。その際、居住者専用の駐車場であることの事実が認識できる書類を添付して提出することにより過年度にさかのぼって固定資産税の還付を受けることができます。
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